toggle
2016-07-30 | なかのひと6号

ひと 大久保博樹准教授

「メディア情報学部記者クラブ」便りNO.36 (配信日:2015/10/20)
メディア情報学部の教員・授業・催し・施設・先輩等々の魅力について、メディア情報学部でマスメディアを学ぶ学生記者が取材し、レポートします。

20151020media_01大久保博樹(おおくぼ・ひろき)准教授の駿河台大学との関わりは、2001年に非常勤講師として教壇に立ったのが始まり。07年からは、現在のメディア情報学部の専任となり、『音響情報論』、『音楽情報処理演習』など音響関係の科目を担当している。

先生が音響に関心を持ったのは、映画制作に挑戦したのがきっかけだったという。もともと映画やラジオ番組を作ることに興味があり、中学時代に父親の8ミリフィルム・カメラを借りて初めての映画制作をした。クラスメートを集め、床屋を一軒借り切り、西村京太郎さんの短編小説を映画化した。その際、著作権をクリアするため、先生は西村さんに直接電話をしたそうだ。すごい行動力だ。

こうした自主制作映画の活動を続けていく中でぶち当たった壁が、音の問題。撮影時にカメラで同時に録音した音、役者のアフレコ、音楽、効果音など、映像を際だたせようとすればするほど「音」が気になり、その難しさと重要性を認識するようになったという。

映像と音響について本格的に勉強を始めた大久保先生にとって、音を再考する転機になったのが大学院の恩師の一言だった。海の映像の音に、レコードのライブラリーに収録されている波の音を使ったが、今一つしっくりこない。ニッポン放送の元プロデューサーでもある大学院の恩師に聞くと、「合うわけないでしょう。だって、それは君の作品のための音じゃないんだから」。その言葉がストンと腑に落ちた。「ああ、今まで感じていた微妙な違和感はそういうことか」と納得した先生は、音は一つひとつ作るものだとの認識を新たにし、そこに集中して研究を進めていった。音響工学の専門家はもちろん、声優さんや、放送局のプロデューサーなど、制作の第一線にいるプロの話をたくさん聞いたことが、その後の研究の進展と今の授業につながっているという。
先生に現在の趣味を伺ったところ、読書や音楽、映画、スポーツと多彩。今は忙しくて映画を作る時間がないのが残念だという。
好きな作家をお聞きしたところ、ジョン・ル・カレ、J・G・バラード、ローレンス・ブロック、ロス・マクドナルド、レイモンド・チャンドラー、ジェイムズ・エルロイなどたくさん名前が挙がった。駿河台大学生やこれから駿大に入学を考える高校生にお薦めの本があればとさらに伺うと、アーシュラー・K・ル=グウィンの「いまファンタジーにできること」を薦められた。ル=グウィンは『闇の左手』や『ゲド戦記』などの代表作のある米国の作家。「物を作る人にとっては貴重な言葉の詰まった本」「一行ずつが重い、非常に素晴らしい内容」とのことで、先生も何回も読み返しているという。これはぜひ、読みたい。

インタビュー中、先生は様々な先人の言葉を大切にしていると感じた。気になったものはすべてメモにとり、一つのノートにまとめているのだという。その中から毎年卒業生に贈っているという金言を見せていただいた。

<キャッツキル山の鷲>

それに、ある人々の魂の中にはキャッツキル山の鷲がいて
暗黒の谷へ真っ逆さまに下っても
再び舞い上がって太陽輝く空間へ消えて行くことができる
その鷲が永遠に谷の中を飛翔していても
谷は山中にあり、たとえ平原の他の鳥が舞い上がっても
谷底を飛ぶ鷲の方がまだ高い

『白鯨』で知られる米国の作家、ハーマン・メルヴィルの言葉だ。先生はそれを「周りの人の視線とか評判とかネット上のランキングとか、他人のモノサシでふわふわしないほうがいい」ということを伝えるために贈っているという。「人の価値観ばかりに合わせて生きることは自分の人生にならない」ということだそうだ。

最後に学生へメッセージをお願いした。「まず、自分が興味を持ったものを掘り下げていくこと。そうすると、これまで無関係と思っていた数学とか天文学とか文学とかスポーツ生理学とか、いろいろな分野があれもこれも実は繋がっていて大切だとわかってくる。そしたらまた少しずつ勉強を重ねていけば、教養となって視野も広がっていくし、人間としても幅の広い人になれると思う。だから、本当に好きなことを見出してほしい」。

(瀬戸ゼミ3年 押木 翼)

関連記事